問題の概要と私たちの思い
福山市長枝廣直幹さん!
市民の財産である福山駅北口広場の土地を、勝手にJR西日本に処分(土地交換)しないでください!
新幹線のホームからも見え、日本100名城に選定されている福山城を持つ広島県福山市。
福山市長枝廣直樹氏は、市の大切な財産である福山駅北口広場の土地を、南口のJR西日本所有地と交換しようとしています。さらにその交換に際し市民の血税5600万円を上乗せしようとしています。そして、「(その土地交換は)等価交換であるから市議会の議決はいらない専決処分である。」と豪語しています。
あろうことか、福山市からJR西日本に支払われる5600万円の金額の決定は、適切な不動産鑑定がないことなど正当な根拠がないのです。
私たち福山市民の財産である土地を、福山市長の独断によって勝手に処分されてしまうことを食い止めるため、どうか、みなさんの力を貸してください!
本件は、経緯・概要が複雑で一言では言い表せません。少し長くなってしまいますが、私たちの主張の背景や何が問題なのか以下説明します。
1、問題の舞台、福山市、福山駅北口広場について
広島県の東部にあり、人口47万人余の中核市福山市は、JFEをはじめとする工業で栄えた市です。日本100名城に選定されている福山城を持つことで知られており、新幹線のホームからもその美しい姿が見られます。
福山市の玄関口が商業施設や飲食店の集中している南口ならば、北口は福山市の勝手口とでも言えるでしょうか。駅の南側には百貨店や飲食店、ホテルが立ち並んでいます。衰退を感じる中にも賑わいも根強く感じられます。駅前にはJR西日本の所有地ながら市のために地下に無償の使用権(地上権)が設定されており、市は地下送迎場を2011年に建設し供用を開始しました。
駅の北口を出るとすぐに福山市きっての観光名所である福山城の大きな石垣がそそり立ち、かつて城下であった土地には、緑豊かな公園を設け、高い建物を建てず、見通しのよい開けた空間が広がっています。福山駅の北側は福山市の豊かな文化的側面を象徴しているといえます。
福山市と旧国鉄との合意のもと、公益的見地から、1977年に駅北側に「福山駅北口広場」を整備して市民の生活の需要な一拠点として親しまれています。そこには、送迎バス乗降場やタクシー乗り場、無料の自家用車送迎用ロータリーがあり、市民の駅への気軽なアクセスを可能としています。さらに市営の時間貸し駐車場を設けており年間5400万円の料金収入があります。
福山城公園から見た福山駅北口広場
2、問題の発生
⑴2007年2月28日付け福山市とJR西日本間での覚書と2019年7月8日付けJR西日本からの福山駅北口広場基本方針に関する協定書の締結
ア、 覚書と協定書の内容
イ ロ 福山駅北口市所有地・ハ 南口 JR西日本所有地
2007年2月28日、前福山市長羽田晧氏とJR西日本との間で土地利用に関する「覚書」が取り交わされました。その内容は、【駅の南側のJR西日本が所有する土地(ハ)の地下空間に市の無償使用権を設定する。その代わりに、駅の北側の市が所有する土地(イロ)のうち一部の上空についてJR西日本が単独または市と共同で駐車場施設を整備し、同社にその無償使用権を設定する】旨を定めたものでした。
そして、それから10年以上経った2019年7月8日、現福山市長枝廣直幹氏はJR西日本と福山市の間で「福山駅北口広場の整備等に関する協定書」を結びました。その内容は、【市が所有する(イロ)の土地と、JR西日本が所有する(ハ)の土地~略~は、2021年(令和3年)3月31日までに南北土地交換を完了する】というものでした。
イ、土地交換の不要
福山市長枝廣直幹氏はこの両土地の交換の必要性を「(JR西日本から設定されている無償使用権は)いつまでも使用できる保障はないから」と説明しました。これは2007年2月28日の市とJR西日本間での「覚書」の内容を理解していません。同覚書による合意内容には市が駅南側にあるJR西日本の土地(ハ)を使用できる権利には期限の定めはありません。私たちは土地交換をする必要性はないと考えています。
ウ、処分における市議会の議決の必要性
また、この交換は市議会の議決を経ていません。地方自治法96条第1項6,8号は、地方公共団体の財産の処分については議会の決議を経るよう求めています。福山市の「議会の議決に付すべき財産の取得または処分に関する条例」(昭和41年条例第20号)第2条には5000㎡以下の土地の取得または処分は議会の決議を必要とする場合からは除外していますが、一方では4500万円以上の財産の取得又は処分は、議会の決議を必要としています。
福山市所有の(イロ)の土地は4484㎡の土地であり、5000㎡以下ですが、協定書では13億1400万円であると福山市は主張しています。財産の価値は4500万円をはるかに上回っています。
この土地交換については市議会で議論し、議決する必要があるのではないでしょうか。
エ、価値評価の正当性の欠如
同時に、同協定書には「この交換を等価交換とするため福山市はJR西日本に5600万円を支払って差額調整する(等価とする)こと」も合意されています。
しかし、この「等価交換」を名目とした差額5600万円の算定には根拠がありません。両土地の不動産鑑定評価は2007年10月に提出された鑑定評価書の結果を、2017年に修正意見書として地価変動率を単純に掛けて修正しただけで、ハの土地について地形の持つ特異性による価格の減額調整をしておらず、直下に地下送迎場があり建物を建てられない点をきちんと評価していません。まるで10年前の不動産鑑定評価をそのまま使用するわけにはいかないので、急遽適当に行った不動産鑑定評価を調整したように見えます。市が土地交換に際しJR西日本に5600万円を支払わなければならない、5600万円という数字ありきの口裏合わせのような付け焼刃的意見書を準備したように見えます。市長への不信感は募るばかりです。
⑵土地交換へ向けての準備
この2019年7月8日の協定書を潮目に、市は土地交換に向け市民への充分な説明をしないまま、着々と準備を進めています。2020年2月には突如、駅北側の市所有地(イロ)上にある送迎バス乗降場を福山城東側にある石垣公園に移設すると発表をしました。土地交換を可能とするため、(イロ)の土地上にある障害物を取り除こうとしているように思えます。(後述の通り、のちに撤回)
恥ずかしいことですが、これらの決定を知らない市民が多くいます。
土地が交換されてしまい市民の大切な財産が失われてからでは遅いのです。
3、侵害される市民の利益
この2019年7月8日の協定書で決められた福山市とJR西日本間での土地交換が、市民への十分な説明や市民の意見のヒアリングの機会もなくこのまま強引に強行されてしまうと、多くの市民の利益が害されてしまいます。
① 景観
現在駅側から問題の土地(イロ)方面に顔を向けると、大きな建物がなく、美しい福山城を眺望することができます。この土地に6階建てのホテルや商業施設、5階建ての立体駐車場が建てられれば圧迫感や閉塞感を感じることになるでしょう。
また福山城の東側にある緑豊かな公園、通称石垣公園を潰してしまう送迎バス乗降場の移設計画も市民の憩いの場を奪い、福山城周辺一体の景観も著しく損なってしまうでしょう。(後述の通り、のちに撤回)
駅側から見た問題の市所有地(イロ)
② 市民の安心安全
上記のように(イロ)の土地上にある送迎バス乗降場の移設先として、計画当初、候補地に挙げられていたのは、公共施設である福山城の東側にある緑豊かな公園でした。
この公園と福山駅北口広場は「災害時避難場所」にも指定されています。緊急時市民の安全を確保し、復興、復旧作業の拠点とする場所は一つでも多く必要だと思います。それを潰してまで、送迎バス乗降場を移設しなければならない合理性はありません。(後述の通り、のちに撤回)
③ 駐車場収入
福山市は現在(イロ)の土地に時間貸し駐車場を設置しています。年間約5400万円の料金収入があります。JR西日本と土地交換をしてしまえば、その収入はなくなってしまいます。未来永劫にです。
④ 利便性
上記③で挙げた市営の時間貸し駐車場は、駅や駅直結のショッピング施設へのアクセス拠点として市民に親しまれています。また、駅へ送迎の為にやってきた市民の自家用車用に約20数台分が停車できる無料のロータリーも設けています。これらが本件の土地交換でイロの土地をJR西日本に譲渡されれば、有料の立体駐車場へとなり替わってしまいます。市民が駅周辺に気軽に立ち寄ることを妨げてしまうでしょう。
⑤ 文化的価値
本件で処分されようとしている福山市所有の(イロ)の土地は、福山藩二代藩主水野勝俊から後の城主が代々住んだ屋敷跡です。
福山城は2022年8月28日に築城400年を迎えます。
この記念すべき年を前に、しかも福山城を福山市の名所として売り込んでいる市が、なぜ福山城の城下として残る最後の土地を民間企業であるJR西日本に譲渡してしまうのでしょうか。
市は文化を継承しその地域固有の財産である土地を有効に活用していく努力を自らの手で行っていくべきなのではないでしょうか。
⑥ 所有権
JR西日本と福山市の間で合意されている本件協定書に基づく土地鑑定価格によると、福山市はこの土地交換で(イロ)の土地13億1400万円もの価値を有する土地を、JR西日本に5600万円を更に支払った上で(ハ)の土地と交換しようとしています。この(イロ)の土地は上述のように、駅へのアクセスも良く、利用価値は極めて高いものです。まさに、それは福山市民の財産です。「宝」なのです。市長の独断で処分していい財産ではありません。もし交換をしてしまい民間企業であるJR西日本の手に渡ってしまえば、利益追求至上主義のJR西日本が、市民優先の計画を策定するとは決して思えません。
所有権を譲渡してしまっては、その後に、大きな建物が建ってしまってから、何か大きなものを失ったことに気付いても、取り返しがつかないのです。
そうなってしまうことは絶対に阻止しなければなりません。
4、これまでの活動、なぜネット署名をお願いするのか
①2019年10月に私達のメンバーのうちの2人が、この市長の暴走ともいうべき計画に疑問を抱き、活動をスタートさせました。
市長に面会依頼をしても回答はなく、他の市議会議員に陳情してもなかなか話を聞いてはくれなかったそうです。それでも、少しずつ疑問を抱く市民は増え、2020年5月「福山駅北口広場を守る会」が、結成され活動を開始しました。
②同年5月29日、市議会に請願書を提出しました。しかし、同年6月17日、不採択とされました。
③同年7月6日、福山市監査委員会に監査請求しました。しかし、同年9月3日、却下決定されました。
④同年8月13日に、JR西日本から福山市に対し本件に関し協議の申し入れがあり、同日福山市建設局都市部から報道機関に公表文が発せられました。内容は、【1、協議の申し入れがあったこと。2、土地交換の期限を2019年7月8日の協定書に定める2021年3月31日から一年延期し、2022年3月31日までとしたい。3、南北土地価格は両者が再評価を行い、その価格を参考にして決めたい。4、整備施設の設計は2018年11月27日福山駅北口広場整備基本方針に関する提案書記載の建物用途からホテル用途を除くこととしたい。5、現協定を廃止し、新たに福山駅北口広場の整備等に関する協定書を締結したい。】というものでした。
しかしながら、2020年10月4日の中国新聞の報道では、JR西日本岡山支社長の平島道孝氏は「土地交換する考えに変わりはない。」と述べています。
⑤ 同年9月30日福山駅北口広場を守る会の原告18名は、福山市長枝廣直幹氏を被告として広島地方裁判所に住民訴訟を提起しました。
⑥ 同年12月突如福山市都市部長から「同年2月に公表した送迎バス乗降場を福山城東側にある石垣公園に移設する計画は、送迎バス乗降場の移設先として駅南口に別の候補地が決定したため、白紙に戻す」との報告が周辺住民になされました。これで、上記3の①の景観や②の公園という公共施設、避難場所を失ってしまう可能性は少し小さくなりました。公園が潰されてしまうことや、福山市所有のイロの土地にホテルが建つことは回避できることになりましたが、土地交換がされてしまう危険性は今なお強く残っています。また、一度とはいえ、景観や市民の安心安全を守る施設を、民間企業のJR西日本に譲渡する決断をした市長に、今後、福山市民の財産と生活を守る判断を期待することはできません。
土地の所有権が民間企業に渡ってしまったら、もう取り返しがつきません。
私達は「自分達の(公の)土地は自分達でより良く活用していきたい。そのためには民主主義に則った手続きと公正で公平な判断で行政を行っているかどうかを見守っていきたい」と考えます。
私達は、住民訴訟の第二回口頭弁論(2021年3月3日)に臨みます。ぜひネット上での多くのみなさんの署名をいただき、訴訟の後押しとして力をお貸しいただければと思います。
⑦ 現在、福山駅北口広場を守る会が集めた署名は1万5000筆を超えました。福山市民はもちろん、福山市外のみなさんからも、私達と同じ意見であるとして署名してくださっています。
しかし、残念なことですが、福山市長の暴走を止めるにはまだ足りないようです。
5、最後に、この問題は、日本の政治の縮図とも言えると思います。
表では官民連携を謳い、裏では行政と民間企業の癒着を目論み、行政のトップが、したたかに、着々と、ブラックな計画を進めようとしているのではないでしょうか。
まさに国有地を森友学園に極めて廉価で払い下げ、政治的あるいは個人的見返りを求め、最後は一人の命まで絶った、あの「森友事件」と同じ構造をしているように思えます。
行政(公務員)は憲法を守り、全体の奉仕者として、主権者である国民の利益を第一に考えるべきです。特定の者の利権・利益を優先してはならないはずです。
地方自治体にも同じことが言えます。
首長は、住民の目線に立ってリーダーシップを発揮し、住民の生活と福祉を第一に考え、その地域のさらなる発展を目指すべきです。民間企業との癒着を疑われることなく、「李下に冠を正さず、瓜田に履を納れず」の姿勢を貫かなければいけません。
民主主義の主役である市民は、地域の未来は、行政に、就中、そのトップに丸投げするのではなく、自分達で考え決定していくべきだと考えています。
私達は、福山市長枝廣直幹氏が、まさに「君子」として「南北土地交換」を断念するまで活動を続けようと思っています。
このうえは一人でも多くのみなさんのネット署名をいただけるよう、心からお願いする次第です。
長くなってしまいましたが、これが私達の主張です。
一人一人の声は小さくても、集まれば大きな力となることを信じています。
是非あなたの力をお貸しいただいて、ご署名ください!
よろしくお願いいたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
2021.2.3
福山駅北口広場を守る会 共同代表 弁護士 川﨑保孝
(文責)