意見陳述書の掲載
2020年12月23日、福山駅北口広場を守る会が提起した土地譲渡差止等請求・住民訴訟の
第一回口頭弁論で、原告団を代表して廣中敬子さんが次のとおり意見陳述しました。
以下その意見陳述書の全文を掲載します。
住民の熱い思いが綴られています。ぜひご一読ください。
意 見 陳 述 書
原告団 廣中 敬子
(福山駅北口を守る会)
意見陳述の機会を頂き感謝申し上げます。
訴状の内容とかけ離れた陳述を致しますが、この訴訟の根底には、法の尺度では計れない私共原告団の熱い思いが流れていることを、お伝えできれば、と思います。
私は福山で生まれ福山で育ちました。
日本中のほとんどの方は福山市がどこにあるのか知りません。けれど「新幹線の駅のすぐ間近にお城のある町です。」と言うと「アーッ!あそこですか。」「知っています。」と言われます。
その福山城は400年程昔、徳川家康の従兄にあたる水野勝成公が築城し、城下を整備してゆきました。備後福山藩は南北東西共に600mという広大な敷地を持つお城と共に歴史を刻んでゆきます。
明治の廃藩置県の世となり、譜代大名であった福山は非常に苦しい財政となってしまいます。それゆえ官の所有であったお城の敷地は次々と切り売りされ、民間の所有地となっていきました。
私の子供の頃はどこからでもお城を望むことができましたが、現在では高いビルがびっしりと建築されてしまいました。そして今、駅の北口に残る1358坪の最後の空間。これは二代藩主、水野勝俊公からあと代々城主が住まわれていた屋敷跡であり現在福山市が所有しております。市長はじめ行政が次の世代へと守り続けなくてはならない貴重な市民の財産です。
この北口広場の役割は絶大です。
広場があるおかげで新幹線のホームのどの位置からも福山城を望むことができます。
「福山市民の誇り」であり他のどの駅にもない「日本の宝」とも言えるのではないでしょうか。
また立体ではなく平面の駐車スペースがあるおかげで自家用車・送迎バス等、市民は気軽に駅を利用することができます。
そして駅直結の広場というものは防災上も非常に重要です。
このようにすばらしい土地をJRが「手に入れたい!」と。その気持ちはよく理解できます。
しかし今までの市長以下職員達はJRのこの意向を知りながらも「市民の大切な財産だから・・・」と今日まで守り続けてきました。
ではなぜ、何のために、今回枝廣市長はこのように大切な土地の所有権をJRに渡してしまうのでしょうか。
市長は手放す理由を何項目か発表しています。
1番目の理由、2007年、前市長がJRと交わした覚書があるため、と。
しかしその覚書には「JRに譲渡する」という文言は全くありません。
2番目の理由、駅南口はほとんど市が所有しているが一部JRの所有地があり、自由に使えない。よって北口と交換する、と。
それではなぜ南口のJR所有地を、買い取る努力をしないのでしょう。
3番目、官民連携で駅前に賑わいを創生する、とのこと。
連携は良いです。しかしJRに北口を譲渡すると賑わいが生まれるのですか? 悲しいことですが駅周辺の施設は次々とさびれていっています。それは無料で広大な駐車場を駅周辺には用意できないからです。有料でしかも使いにくい立体駐車場では人は集まりません。郊外型ショッピングセンターの賑わいが顕著に証明しています。
第一、JRが市民優先の計画を考えるとは思えません。先般もビジネスホテル建設案を出してきたのです。いったいどこが福山市民のためでしょ う。鉄道を利用しなくても仕事ができる新しい時代。今後JRは益々公 共性をなくし企業の利益優先へと変貌してゆくことでしょう。
4番目、「築城400年の記念すべきすばらしい事業である」と主張しています。
築城400年の記念すべき時、お殿様が住まわれていた敷地を手放すとは、
一体どういうことでしょう。
これら市長の理由付けをどんなに大目にみても失うものがあまりに大きすぎます。未来永劫二度と取り戻すことはできません。
それにあの北口広場に、JRがコンクリートの建造物を建設した図を想像しただけで、狭苦しく、息の詰まるような感覚に襲われます。福山城口というネーミングだけりっぱな駅北口は景観をなくし、細い道路1本のみ残す裏玄関、いえ勝手口へと品格を失ってしまうでしょう。
それだけではありません。所有権を失ったとたん広場にあった大型バスの発着場はただちに行き場を失ってしまいます。
そこで市は駅の北にある緑の公園をなくし、バス発着場にする案を出してまいりました。この公園の敷地は1955年就任の徳永市長以降、何十年もかかって住んでいる方々への説得を重ね、市が買い戻した歴史があります。今ではお城の石垣を守る美しい公園として市民の憩いの場となっています。伐採されてしまう公園の樹木と共に町の情緒、文化、歴史までなぎ倒されるような、あまりに乱暴な計画です。
さすがにこの計画は、私たち住民の反対が強いから、とつい先日撤回されました。しかしこの間の経緯から市長の心の底の非情さを垣間見たような気が致します。
このようにJRへ所有権譲渡という間違った処方の副作用は市民にとって耐え難い結果を次々と生んでゆくことでしょう。
市長本人とじっくり対話の場を持ちたく、この1年何度も面談の申し入れを致しました。しかし、すべて断られ市職員からの説明だけでした。
署名が集まれば直接会って下さるのでは・・・という気持ちで昨年10月から友人知人のつながりだけで署名を始めました。10ヶ月足らずで15,000筆以上にのぼり、多くの方々が賛同し応援下さっています。
先日12月12日の新聞報道でJR西は鉄道事業の将来性に不安を抱き、不動産事業の強化に乗り出していく、とありました。北口譲渡はJRに利用されるだけです。一部の人々の利益のため、福山の玄関を売るようなことは決して許されない事です。
これは多くの市民の切なる願いです。
何年か前、最高裁判所を見学させて頂いた事があります。正面玄関を入って少しゆくと、左手に天秤を、右手に剣を持った女神の像が毅然と立っておりました。左手の天秤で人々の公平をはかりながら右手の剣で正義を守る。
裁判官をはじめ、司法に携わる方々はこのような信念のもと仕事をされているのだ・・・と大変感銘を受けたのを覚えております。
100年後200年後も北口広場がお城の前に残る最後の空間であり続けますように、そして福山市の所有であり続けますように。
今、崖っ縁に立たされている「私達の町、福山」を救って下さるのは
もはや裁判官しかいらっしゃいません。
2020年12月23日
0コメント